柳亭こみち 独占インタビュー(6)

「自分で見つけて自分で作って納得できないと、自分の噺(ネタ)にはならないんです。」

― 「こみち落語」の手応えを感じたのは、いつからですか。方法論が確立されたのは。

 

そんな!手応えだなんてまだまだです。自分の中で方法論が見つかった、ということです。確立もされてないです。手法が見つかったってだけです。(改編に挑戦した結果)失敗する場合も多いので。ただ、古典落語にも女性は生きてるんだってことに気づけたのは大きかったですね。スポットライトを当てるってことは身についた。でも、その光をどの角度から、誰に当てればよいかは試行錯誤の連続ですね。一つでも多く(「こみち落語」として)カタチにしていかなきゃ、という気持ちです。

 

ここまでの経験上、寄席サイズの15分ほどのネタは「こみち落語」化しやすい場合もありますけど、大ネタ程、「こみち落語」にするのが至難の業。大きなネタであればあるほど噺の中の男性が活躍していますし、噺の筋として男性の役が男性である必然性があります。寄席でトリをとれる真打でありたいと思っていますので、この課題も大変です。

 

― そういうことで言いますと例えば「芝浜(※)」とか、ぜひ「こみち落語」として聞いてみたいです。

 

そうですね。(ネタとして)持ってないので、まずは普通にやってみて自分の中にしっかり噺を入れてからですね。それから、どう自分らしく練るかを考えたいですね。「芝浜」なんて、おかみさんが呑んだくれの亭主に手を焼く噺というとらえ方もできますよね。女性版にする以前に、女性の心にスポットライトが充分あたっていますものね。

 

お客様に「あの噺をこみち版にしてください」と言われることもあります。お客様の反応、お客様からの意見や感想はとても大切にしています。例の「壺算」もお客様のある意見から、今のカタチになりましたしね。

 

― 2016年秋、紫綬褒章を受章された五街道雲助師匠は受賞に際し、「噺だけが動いて高座の自分が消える。それが私が演じる境地です」と語っていらっしゃいました。

 

すごいですよね。私もその通りだと思います。登場人物と自分が一体化すれば、高座の噺家が消える、ということは私も意識しています。

 

私の場合は女性ですから、男性には一体化できる登場人物も、どうしても「演じている」感が残り、自分が消える域にまでいくのは至難の業だという噺が多いと思います。

 

自分が登場人物と一体化できるための方法を自分で見つけて、自分で作らないと、そして納得してできないと、真の意味で噺だけが動くようにはなりませんし、「自分の噺(ネタ)」にはならないように思います。そこまでやって初めて自分と噺が一体化できるんだろうと、私の場合は感じています。

 

「こみち落語は歩き始めたばかり。温かく見守ってください。」

― 白鳥師匠の落語が「改作落語」の一言で説明が済まされない(済ますべきではない)のと同じように、こみちさんの落語も「改作落語」の一言で説明されるべきではないと思っています。あるいは、喬太郎師匠ならではの改作領域(改作というのとも、また違ったレベル)にも向かって来ているというか、ベクトルが。そんな風にも思いますが。

 

とんでもない!喬太郎師匠や白鳥師匠は天才中の天才です!そのような師匠方と同じ方向だなんて、おこがましすぎてレベルが違い過ぎて、お恥ずかしいです。

 

レベルは違いますが、私は私なりに、私らしい噺を一つでも多く作っていきたいと思っています。それらを女性の落語の一つの形として22世紀に残せたらいいなあという、夢も強く持っています。

 

まだ、「こみち落語」は歩き始めたばかりなので、これからです。温かく見守っていただければ幸いです。

 

※ 三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう):師匠・円丈の異能なDNAを最も色濃く継承している二番弟子。春風亭昇太を始めとする「SWA(創作話芸アソシエーション)」の一員(当時)。常識に囚われない破天荒な新作落語で落語界を牽引する稀代のストーリーテラー。

※ 柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう):古典・新作両面で高い評価を獲得し、落語界を代表する人気者。古典は人情噺で知られる柳家さん喬に正統派の落語を学び、新作落語では三遊亭円丈に多大なる影響を受けて今がある。SWAの一員(当時)。

 

― 超多忙な中、「落語協会音頭(仮)への道(※)」も活動中です。実現しそうですか?

 

これは3~4年前に粋歌(※)が「謝楽祭(※)にみんなで歌って踊れる音頭があったら楽しいですよね」って言ったんですよ。それを聞いて、それだ!と。やろうと。実現しようと。彼女に一緒に作ろうと声をかけて二人でつくりました。

 

今年のはまだ振付が難しすぎたようで、より多くの方に踊っていただけるように来年に向けて改良しつづけます。まずは、落語協会の夏の寄合でプレゼンテーションしたいと思っています。で、その後「謝楽祭」での実演に向けてという野望を抱いています。急いてはことを仕損じると言いますから、焦らず、地道に曲と振付を練り、実現させたいと思っています。

 

※ 落語協会音頭(仮)への道:落語協会のファン感謝デー「謝落祭」で、みんなで歌って踊れる音頭があったらいいのにね!という発想で、それを具体化するために催された落語会。

※ 三遊亭粋歌(さんゆうていすいか):新作落語を得意としている女性落語家。第二回渋谷らくご創作らくご大賞を受賞。夫は同じく落語家の柳家小八。

※ 謝楽祭(しゃらくさい):一般社団法人落語協会のファン感謝デー、年に一度のお祭りのこと。

 

― 歌と踊りも継続中で、さらにお忙しく。

 

何より歌と踊りが好きなんですね。あと、歌と踊りを定期的に習っていると、からだが古典落語になるように思います。古典を、江戸を、表現するための体づくりと言いますか。そういう意味でもお稽古は大事です。

 

まず、うちの踊りの師匠(※)は江戸から抜け出てきたような方なんです。ハワイにも着物で行く方。毎日着物で、冬は火鉢で暮らしてるんです。そんな人なので、スイカを食べても、素麺すすっても「あぁ、目の前に江戸の人がいる。江戸の人がスイカ食べてる、素麺すすってる」と感じるんですよ。そんな師匠から教えを受け、所作や立ち居振る舞いを学ぶことで、少しでも(高座で)カタチよく“江戸の匂い”を放ちたいとは思っています。

 

※ 吾妻春千穂(あづま はるちほ):日本舞踊 吾妻流師範。吾妻流幹部。

 

― 落語家でいる上で、歌と踊りは大切ですね

 

そうなんです。特に女性の場合、着物を着て形が悪いのはいけません。端正に見えないと。中には「女性は落語の中で動かないほうがいい。動くと女だと思ってしまうから(落語の世界を壊すから)」と言う方もいます。でも、男性を演じているときは男性の所作で動けばいいわけです。動いていいと思います。動き方を気を付ければいいだけ。

 

― 「こみち落語」にしようとしている次のネタは何ですか?

 

秘密です。これは今は言わないでおきます。乞うご期待と言うことで(笑)

 

― 「こみち落語」が生まれた背景には、今の時代性も無関係ではないと思うんですよ。今は女性の社会進出であるとか。そういう意味では時代の流れも追い風なのではないでしょうか。男女平等や女性の自立、女性活躍推進の勢いも年々盛んですし。

 

そうかも知れませんね。男女共同参画や、働く女性をテーマにした講演に呼んでいただくお仕事も増えています。

 


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。こみち師匠の本音、素顔。そして「こみち落語」。

 

柳亭こみち 独占インタビュー(1)

柳亭こみち 独占インタビュー(2)

柳亭こみち 独占インタビュー(3)

柳亭こみち 独占インタビュー(4)

柳亭こみち 独占インタビュー(5)

柳亭こみち 独占インタビュー(6)

柳亭こみち 独占インタビュー(7)

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