柳亭こみち 独占インタビュー(5)

「発想さえ変えれば(こみち落語は)無限に作れるんです。」

― 今の目標は?

 

今、この元気なうちに、「こみち落語」をできるだけ多く作ることです。「こみち落語」の基礎をできるだけ固めたいと思っています。ただ、独演会などをやる際、また、寄席でネタがつかないようにする(※)には、「こみち落語」だけではダメで、普通の古典(男性が活躍する噺)も持っていないといけませんから、そこもしっかり磨いてやっていきたいです。

 

※ネタがつく:同じネタ、同じ系統のネタで重複してしまうこと。前の落語家がやったのと同じネタはもちろん、同系統のネタはやらないという暗黙のルール。例えば「時そば」の演目が前に出ていたら同じ日に「そば清」はNG。なぜなら、どちらも蕎麦の噺だから、など。

 

― 結局、今現在、「こみち落語」は何作くらいお持ちですか?

 

具体的には数えていません。活躍なさっている師匠方は、どの噺もその方にしかない味を出されています。ですから今後は全ての噺を“自分色”に染めていきたいな、と思っています。

 

― 燕路師匠は「こみち落語」については?

 

師匠の前であまりやったことはないんです。でも知ってるとは思いますよ。楽屋で根多帳を見るわけですし。根多帳を見たらわかるじゃないですか。いわゆる古典のそれとは微妙にタイトルが違うわけですから(苦笑)。

 

― 何も言われたことはない?

 

ほとんどないですが、ちょっとだけ。「二番煎じ」におかみさんを出してやってるのを聞いた師匠から言われたのが

 

「そんなこと(アレンジ)を考えるよりも、噺の中で大事にしなきゃいけないのは(とても寒い夜中、町内を見回って番小屋に戻ってきた登場人物たちが)火に当たって暖まる時の仕草と心持ちだよ。まだ、からだの芯は冷えているけど、手のひらから徐々に暖まっていく感じとかその演じ方。そこらへんを俺たちは大事にしていかなきゃいけない。…と、俺は思うけども、お前が生きる道を探しているなら、やるなとは言わない」

 

…でした。

 

だから、重鎮の師匠方とはまったく違うことを考えてやっているという自覚はあります。私にとって良いか悪いかはわかりません。ただ、ひとつ確実に言えることは「目の前のお客様を楽しませたい」、ただそれだけです。

 

古典をまっすぐそのままやっても「(女性が演じているという)違和感はないね」。「しっかりと古典落語に取り組んでますね。(でも男性の方が面白いけどね)」と、必ずカッコ書きがくっついてくるんですよ。なので、その領域で小手先でちょこちょこやっても、生き残れないように思います。いくら及第点を取っていても、次の新しい若手真打(女性)が現れたら、押し出されて消えるだけだと思います。

 

だから、どんなに面白い真打のあとに(高座に)上がっても戦える何かを、ひとつでも多く持っていなければいけないんです。カード(自分だけのネタ)をたくさん持ってないと真打として戦っていくのは難しいと思っています。

 

「覚悟してからは、いろんなことが怖くなくなりました。」

― プロとして心配する・備えるというのは充分理解できます。でも個人的には、古典という基礎が盤石で、改作も出来て、踊れて(日本舞踊)、唄えて(小唄・端唄)。唯一のネック(?)だった「女性である」点も「こみち版落語」で逆に武器に変えてしまった今、あとは何が不安ですか?ここまでくると手札満載で、無敵モードのような気もしますが。

 

いやぁ。そんなことはないですよ。とにかくネタを増やさないと。もっと噺を練らないと。

 

― 今の古典も生まれた時は「新作落語」であったように、「こみち落語」も将来、古典中の古典になる可能性が十分あると思っています。

 

どうなんですかねぇ。でも、そうなればいいなとは思います。

 

― 覚悟を決めた人と言うのは美しいですね。

 

ははは。いや、でも本当に覚悟してからは、いろんなことが怖くなくなりました。冒頭に言ったように「こっちの方の道にすすめ(このように改作してみた)!」「あぁ、ダメだった。ウケなかった・・・」「諦めるな!よーし、そしたら、こっちの道はどうだ(ならば、このように変えてみたけどどうだ)!」って思えるようになった、というのが今の心境です。

 

― 自分で苦労して見つけて、腹落ち(納得)して、腹が座ったという境地かと思います。強いですよね、それは。

 

自分の道は自分で見つけないといけないんだなと思いますね。男性の後をついていくだけではダメだと痛感しています。

 

― プロの人を目の前にして上手いことを言いたいわけではないんですが(名前がこみちだけに)小さい道を今一生懸命作っていて、それがやがて王道になるんだろうなと、そんな気がしています。

 

どうですかね。まだ(ネタ)数が少ないですからね。もっと増やさないといけません。(こみち落語として)実現させたい噺がたくさんあります。発想さえ変えれば無限に作れるんですよ。もっともっと量産したいんですよ。

 

― 古典落語の住人には女性だっているという視点で考えれば、古典落語の本数だけ「こみち落語」に改編させることができるということですもんね。

 

実際には、本来の噺の設定のままでしかできない噺が大多数です。でもそこを発想を変えて、「ここにこんな女性を出せば、女性には難しかった噺も演じられる方法がある、あるいは女性が演じて面白くなる!」というスポットライトの当て方を探しています。難しい場合もありますしエネルギーもいりますが、まだまだ可能性があると、出会えていないアイデアが山のようにあると、信じています。

 

今度、師匠に、この私の思いのたけをぶつけて「師匠の、あのネタを教えてください。そして、私なりに変えさせてください(こみち落語化したい)」とお願いするつもりでいるんです。なんと言われるか、心配ではありますが…。

 

― 燕路師匠との関係で言うと、なにか変化・成長はありますか?昔は言われなかったことを言われ始めた、褒められることが増えた、などありますか。

 

はい、だんだん変わってきたように思います。師匠とおかみさんは私にとって大恩人です。これほど恩がある方は師匠とおかみさんをおいて他にいません。以前は私を一人前に育てるために小さなことから大きなことまで指導してきてくれていました。真打になった今は見守っていてくれる感じです。とても心強いです。折に触れて恩返しをしていこう、この気持ちを伝えて行こうと思っています。

 


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。こみち師匠の本音、素顔。そして「こみち落語」。

 

柳亭こみち 独占インタビュー(1)

柳亭こみち 独占インタビュー(2)

柳亭こみち 独占インタビュー(3)

柳亭こみち 独占インタビュー(4)

柳亭こみち 独占インタビュー(5)

柳亭こみち 独占インタビュー(6)

柳亭こみち 独占インタビュー(7)

プレゼントあり!「くがらクイズ」 こみち篇