三遊亭わん丈 独占インタビュー(8)

「すっげぇ新作を作っちゃった!」

― ご自身、円丈師匠との関係で言うと、なにか変化・成長はありますか?昔は言われなかったことを言われ始めた、褒められることが増えた、などありますか。

 

電車で隣に座れるようになった。お宅で師匠とお話しする時に、ちょっと砕けた話する時は胡坐をかいていいようになった。僕に落語のことでよく相談してくれるようになった。「こういうのどう思う?」とか。二つ目としての師匠の喜ばせ方をこの三年半で少しずつ覚えましたね。前座の頃とやっぱり喜んでくれるポイントが違うんだな~と。

 

― 落語家としての悩みを相談したいとかありますか? 師匠などに。

 

落語家としての悩み…。今、無いですねぇ(笑)。あ、すごく潔癖で実は握手が苦手とか…。うん…それ相談したときに返ってくる言葉が想像できるからしません(笑)

 

― いま楽しい、自分の中での旬ネタは?

 

「来場御礼」という新作ですかね。やっと真の新作落語ができた感じ。初めて新作落語を作ったって手ごたえを感じたネタです。このネタができてから「今までのは既存のものをなぞっていただけだな」と感じるぐらい。僕が新作落語で特にすごいなって思っているのはうちの師匠の「悲しみは埼玉へ向けて(※)」と「タイタニック(※)」です。手法が新しいんですよ。

 

※ 悲しみは埼玉へ向けて:三遊亭円丈による新作落語。北千住駅から新栃木駅に向かう東武伊勢崎線など各沿線で繰り広げられる数々の人生模様を描く。地噺に近い傑作。

※ タイタニック:ムービー落語と名付けられた同じく円丈による新作落語。落語らしさ全開でハリウッド映画を表現する師の代表作。同じムービー落語に「ランボー怒りの脱出」 もある。

 

落語の手法ってもう古典で結構出尽くちゃってると思うんですけど、その中でうちの師匠のその2つは新しいんです。その意味で言うと、この「来場御礼」っていう噺は手法もメチャクチャ新しいんです。

 

元々漫才やコントをなさっていた竹千代兄さんにも「この噺、R-1 グランプリいけんじゃない?」って褒められました。特にR-1に出るつもりはないんですが、そういう評価を受けたことは新作落語を作る人間として、めちゃくちゃ嬉しかったです。これでこそ新作落語だなと。

 

― 自分の中の基準点ができたとか、一段階レベルアップしたとかみたいな感じですか?

 

いやぁ、もうこれは、人生に一個でしょう。んもう、これを作った僕は凄いと思う(笑)。また誰がやっても絶対合うネタなんですよコレ。サゲも完っ璧です。

 

― なるほど。どこで聴けますか?

 

あ、じゃあ、くがらくでやりますよ。

 

(くがらくスタッフ大沸き)

 

絶対一席目にやらないといけない噺なんで。二席目以降にやったらダメなんです、これ。

 

― もしかして前回の『わん丈ストリート』 で…??

 

それそれそれそれ!それです。

 

― あ~あ~、ああっ、なるほど。あのネタは確かに良くできています。

 

* 編集部注:ここからの部分はカットします。噺の内容になるので。

 

― ストーンと府に落ちました。あれはほんとに。(今日質問をしよう)聞こうと思っていたんです。あのネタの誕生のきっかけは?

 

 

あれは……

 

* 編集部注:ここからもカットします。当日の「くがらく」をお楽しみに

 

それが僕の Twitter で、いわゆるバズるっていう状態になりまして。事務的な書き込みしかしてないので普段10リツイートとかのがなんか700だなんだ、もう一気にブワァーって。

 

* 編集部注:ここもカットします。当日の「くがらく」をお楽しみに

 

「くがらく」って、ずっと(毎回)満員でしょ?

 

― はい、おかげ様で。あのー、キャンセル待ちのお客様もいつも20~30人いらっしゃって。もっと大きい会場でやらないの?ってよく言われるんですけど、なかなかそれはそれで大変なもので。

 

楽しいなぁ、くがらくのインタビュー。くがらく、出なくていいからまたインタビューだけでもされたい(笑)。

 

はっはっは。いやあ、くがらく、うれしい。前回呼んでもらったとき、そして今回もう一回呼んでもらったのも。おかげ様でインタビューして頂く機会も増えてきまして。

 

― そうですよね。ネットで検索すると、たくさんわん丈さんの記事が出てきます。

 

ありがたいんです。でも同じことを何度も質問される機会も増えてきていまして。なので僕に取材申し込まれる前に、このくがらくインタビューを事前に見て頂いて、僕の人柄とかをだいたいわかってもらってから依頼して欲しいなぁと。

 

(一同笑) 

 

すいません、なんか。私用でくがらくを使うみたいで。

 

― いえ、ちっとも。どうぞ使ってください。

 

なので、今回のインタビューですけど、ホームページにリンクを貼れたらいいなと思っていて。

 

― 本当ですか。うれしいです。よろこんで!では、そろそろ最後に「くがらく」においでになる、ここを読んでいる方にメッセージをお願いします。

 

え、何だろ。11月でしょ?じゃあ、んーと、何がいいかな。NHK落語大賞って、たぶんその時もう結果出てますよねぇ。

 

― 出ていますね

 

じゃあ、えーと。NHK の新人落語大賞。そもそも決勝行けるかどうかわからないし、もちろん優勝できるかもわからないけど、 目指して頑張りますから、僕を慰める準備と、祝福する準備と両方してお越しください(笑)

 

― (笑)わかりました。

 

あと、すごくきれいな着物が出来上がっていると思いますんで、それを着て「くがらく」に行きます! 裏地まで全部見せます!

 


<あとがき>

 

器用と言えば器用、如才ないと言えば如才ない。POPだと言えば、その通り。かと言って、それだけじゃないし、ふわふわはしてない。なぜなら、わん丈さんには“根っこ”があるから。

 

落語家・三遊亭わん丈の“根っこ”=“落語(界)愛・師匠愛”

 

取材していて“落語愛・師匠愛の固まり”が、ますます多層化・巨大化してきたなと思いました。

 

わん丈さんは「今日のことしか考えていませんよ」と言う。

 

半分営業的トークだろうと思いますが、半分は信じます。1日1日を精一杯生きぬくという、あまりにもポジティブで刹那的な生き方が幾重にも重なって、いまのわん丈さんを織り成していると確信するからです。

 

117本の川が流れ込んでひとつになってできたのが、琵琶湖。

目の前の客を全力で楽しませる1日1日の積み重ねでできたのが、三遊亭わん丈。

 

これ以上琵琶湖は大きくならないと思いますが、わん丈さんはあの細身でどこまで貯水量を増やす気なのでしょうか。帰ってきたわん丈さん。お見逃しなきよう。(おわり)

 

<追伸>

今回のインタビューでわん丈さんの口から「いま(今)」って言葉、何回出てきたと思います?80回以上です。“いまを生きる”わん丈さんらしいとは思いませんか。

 

(インタビュー&撮影:2019年8月吉日)

取材・構成・文:三浦琢揚(株式会社ミウラ・リ・デザイン