三遊亭わん丈 独占インタビュー(6)

「『わん丈ストリート』を国立演芸場で、二ヶ月に一度のペースでやる。それがいまの目標です。」

― 先日、「落語を通じて環境問題を楽しく学ぶ」という落語会をされていました。あの環境落語のお話はどこから?

 

立川こしら師匠(※)です。僕その件で愕然となったんです、僕のその能力の無さと言うか。

 

立川こしら:志らく一門。師の一番弟子で「談志の孫弟子初の真打」。およそ落語家らしからぬ高座や風貌、ビジネスセンスに長けた活動などから「異端」という名をほしいままにする無二の落語家。

 

― どういうことです?

 

僕、後輩のこと全然知らないんですよ。元々人を覚えるのがめちゃくちゃ苦手ってのもあるんですけど、それだけじゃなくて、僕と呑みに行ったってきっとつまんないだろうなぁって思うから、お金だけ渡して、一緒には行かなかったり。みんな忙しいだろうとも思うし。だから正直顔もそんなにわからないんです。こしら師匠も人を覚えるのは苦手と伺ったんですよ。でも、こしら師匠はちょっと違ったんです。協会も違う、何度かしか会ったことない僕のことをこのタイミングで覚えてくださっていてこの仕事を紹介してくれたんです。「子どもたちの前でできて、海のプラスティックゴミとかを題材にした新作落語を作れる人は?」っていう条件で、僕の名前を出してくださったんです。ビックリですよ。

 

― どこかで(わん丈さんの噂を)聞いたんでしょうね。直接電話があったのですか?

 

メッセンジャーで連絡をいただきました。

 

― どこかで“こしらアンテナ”に引っ掛かったんでしょうね。落語家なら誰でもいいって会とは違う気がするんです。

 

そうなんですかねぇ。だからとにかく期待を裏切っちゃいけない。ご迷惑をかけちゃいけないと思って臨みました。

 

― わん丈さん。プロダクション契約みたいなオファーは…

 

詳しくはお話しできませんが、実は声は掛けてもらっています。

 

― あぁやっぱり。でも、お嫌ですか?マネジメントされる部分が出てくるというのは

 

落語の仕事のスケジュールだけなら、どれだけ忙しくても自分で管理できますからね。テレビや雑誌のお仕事が中心になると誰かにやってもらわないといけなくなりますけど。

 

― ではさっきの「ちやほやされたい」っていうのは落語でっていう条件付きですか?

 

そうですね。だって「生」で「自分一人」を「何時間も」観てもらえるんですよ。もちろん他の仕事も嬉しいけどホームは落語なので、今後もそこは上手にバランスをとってやっていきたいです。でも林家たい平師匠(※)にある時頂いた言葉が胸に響いて揺れているのも正直なところです。

 

林家たい平(はやしやたいへい):今や誰もが知るテレビの人気者。『笑点』のイメージ(テレビ的なお笑い)が先行しがちだが、古典落語の名手。

 

― たい平師匠に何と?

 

「テレビとかの仕事もやらなきゃな、わん丈。『笑点』 に出るとか大きな舞台でやるとか、どんどんそういう世界に行くと落語家にとって良い面と悪い面とがあると思うだろ。でもね、圧倒的に良い面があるんだよ。それはね、同じことをやるだけなのに出会う人の数がゼロ一つ増えるんだよ。例えば今まで月に 1,000 人、2,000 人としか出会えなかったのが10,000人、20,000人と出会えるようになるんだ。出会える人の数が増えるのはいいことだ」って。すごく力のあるお言葉でした。

 

「寄席の主任、とりたいですよねぇ。10日間連続ものとかやりたい。」

― あんまり先の事はお考えにならないと思うんですが、真打ちになった時のこととか考えますか?

 

あと 6 年くらいありますから。考えていません。ただ、二つ目は長くやりたいなと思います。あの、うちの師匠。 僕がNHKの決勝出たことを、思ってた何倍も喜んでくれて。「真打…」とか「抜擢…」とかそういうワードが会話に出てきたんです。もちろん具体的にじゃないですけどね。ただ、冗談でもそういうワードを聞いたときに怖さを感じます。寄席に出演されてる師匠方に比べたら当たり前ですけど、もっともっと落語をしないと怖くてダメです。もっと二つ目をやりたいです。

 

― いまの目標は?

 

二つ目の間に、今やってるネタ卸しの「わん丈ストリート」っていう会を国立演芸場で、しかも今まで通り二ヶ月に一度のペースでやるっていうのがいまの目標です。2 年後のスケジュールだと思ってやっています。

 

― これはもう夢ではない目標ですね。これは個人的希望ですけど。やはり、鈴本で主任興行をやっているわん丈さんを観に行きたいですね。

 

出たあい。やりたあい。寄席の主任、とりたいですよねぇ。かっこいいよなぁ。10日間連続ものとかやりたいなぁ。古典(ネタ)の間に新作を挟んだりとかして。でも10日間全部続いている、一連のストーリーとしてつながってるみたいな。

 

― いいですね。そういうの聞いたことありませんね。全部続いてるのって。

 

10日間、全部登場人物、喜瀬川(花魁)っていうのどうですか。

 

※ 喜瀬川(きせがわ):落語の中の登場人物の遊女・喜瀬川花魁。「お見立て」「三枚起請」「五人廻し」等に登場する。

 

― おもしろい!聞きたい!

 

僕のちょっと変わった「三枚起請(※)」とか、「お裁きしたーい」とかも入れられるし。それ実現できたら相当おもしろいですよねぇ。

 

※ 三枚起請(さんまいきしょう):倒幕の志士高杉晋作が酒席で作った都都逸「三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい」が登場する客と遊女の物語。

 

― はい。確かにおもしろい。

 

これー、やりたいですねぇ。これ書いちゃうと誰かやっちゃうかもしれないなぁ。書くのやめときましょう(笑)やらない?あーでも、これはすごい斬新かもしれない。落語史に残ったりして。喜瀬川の生い立ちから始めて。

 

― やっぱりひらめきの人、アイデアマンなんですよね。わん丈さん。

 

でもアイデアに溺れちゃったらダメなんですよね。だから師匠も「そんなにアイデア出すな」って。「お前は受け身でいろ」って。

 

― 柔軟ですよね、考え方が。

 

そうですかねぇ。あんまり目立つなってことでしょ。出る杭は打たれる的な。そういや、以前はよく腹の立つ話も耳に入ってたんですよ。「こいつ、俺の事いじめ…」。あ、これ、書いていいですから! 

 

(一同爆笑)  

 

なんかこの人俺のこといじめてるつもりなんかなぁみたいな。もうさすがになくなってきましたけどね。感じなくなっただけかなぁ。でもそういう人への怒りとか反骨心っていうのが僕を芸人として強くしましたね。

 

伝統芸能って上から下に流れてきていて、みんなその恩恵を受けてなんとか生かしてもらってる。僕はとにかく最初に右を向いたり左を向いたりして人物を使い分けることを考えた人に感謝してますね。誰か知りませんけど(笑)だから上からの恩を下に返さないといけない。そして良くない伝統は自分で止めなきゃいけないと。「この世界は上には逆らえない→逆らえないからいじめよう」ってそれはあってはいけない。そんな奴学校寄席なんか絶対に行ったらあきませんよね。そんな経験から後輩のことを、より考えるようになりました。顔は覚えられないけど(笑)