三遊亭わん丈 独占インタビュー(4)

僕がやらなきゃいけないのは「(落語ファンを)減らさない努力」です。

― では逆に、変わらないこと、変えていないことは?

 

僕はお客様を増やす努力を相変わらずしていません(笑)。師匠に入門してすぐに言われた「言われたことと高座だけちゃんとやりなさい」という言いつけを頑なに守っています(笑)

 

― さすがです(笑)

 

そうなると今の僕にできるのはまず「(落語ファンを)減らさない努力」だと思っているんです。性格的にもそれかなと。

 

そのためには落語初心者の方と常連の方を分けちゃいけないなと。僕の落語の前において、初心者の方に「自分は初心者だ」って思わしちゃいけないし、常連さんにも「俺は常連だ」って思わしちゃいけないと思っています。僕の会では垣根をなくしたいというか、どんな人でも一緒になって楽しんで欲しいと思ってやっています。こっちの腕次第だと思いますしね。空間はやっぱり僕が支配してないといけないですし。それをできた!と感じた時に手ごたえを感じます。

 

で、そこでですよ。皆さんに笑ってもらうためにはって考えたときに、僕が頭を悩ますのは実はマニアの方じゃなくて初心者の方なんですよ。

 

ご常連の方ほど、実験して失敗しても許してくださるんですよ。でも、初心者の方はそうはいかない。面白くなかったら、僕の1回の高座で僕だけならまだしも落語自体に失望しちゃうかもしれない。先輩方が増やしてくださった今の落語ファンを減らしてはいけない。だから必死ですね。

 

僕はお客様とのお付き合いはしないんですよ。スケジュールの都合もあるけど、ヨイショとかできないから社長的な人とも呑んだりしたことがほぼない。それに加えてSNSとかも駆使できないから、僕には高座の上しかお客様にアピールできる場所がないんです。

 

それに加えて僕(指を折り、数えながら)、ワガママでしょ、我慢できないでしょ、人の話聞いてないでしょ、んで気が利かないでしょ。んでね、人の名前をま~ったく憶えらんないでしょ。

 

― そんなことないと思いますよ

 

でもね、チヤホヤだけはされたいんですよ(笑)。

 

― はははは(笑)

 

しかも、雑談がめっちゃ下手なんです。僕、それ『日バラ(日曜バラエティ)』 で痛感したんですよ。日バラでお世話になった春風亭昇也兄さん(※)と桂竹千代兄さん(※)は本当にうまいですよ。話するのも聞くのも天才的で。そして優しいし。よく僕と1年間同じ楽屋で耐えられたなと思う(笑)。毎週僕を楽しませてくれた。もうあのお二人大好き!

 

春風亭昇也(しゅんぷうていしょうや):春風亭昇太一門。第5回くがらく出演者。「成金」メンバー。第30回北とぴあ若手落語家競演会で大賞受賞。

桂竹千代(かつらたけちよ):歴史もの新作落語を得意とする桂竹丸一門。コロコロトリオ(神田真紅、三遊亭わん丈、桂竹千代)のメンバー。

 

こんな人間でしょ。以前、くがらくさんに「返信が速いですね」って褒めて頂いたことがありましたよね。

 

― はい

 

言われて僕考えたんですよ。なぜ返信速いんだろう?って。そしたらわかりました。僕みたいな奴、これ以上ひと様にご迷惑かけちゃいけないと思って、なるべく人当たりは良く、言われたことはちゃんとして…ってやっているだけなんですよ。僕なんか絶対人に嫌われるんですよ。落語界においてはそんな奴もそのまんまで生きてた方が可愛げがあるとか言われますけど、僕に関しては絶対可愛くない(笑)。ほぉんと、社会不適合者。だからせめてそういう努力はしていかないといけないんです。

 

― そうなんですかねぇ

 

でも、いまの仕事のリズムは僕に合ってますね。だからこのままが続けばいいなと正直思っちゃってる(笑)。でも、レギュラー番組持ちたくないとか、テレビに出たくないとかそういうわけじゃないんですよ。

 

実際、この1年間で変わったこと。『NHK(新人演芸大賞)』の決勝まで行ったでしょ。これは大きかったですから。もう、どんんんっだけお客様が増えたか。ビッックリしました。しかも良かったのは、やっぱりあの番組は落語に好意的な人が見ていらっしゃること。

 

あの番組の何がいいって、普段やってることがそのまま映るだけじゃないですか。キャラも作らなくていいし、いろんな編集もされないじゃないですか。やっぱり芸能ってライヴが基本だと思うんですよ僕は。だからライヴをそのまま届けてくれるんだったら、そんなテレビはもうバンバン出たい。だから今年もNHKの新人落語大賞の決勝は絶対に出たいです。

 

― もう(予選は)始まってるんでしたっけ?

 

まだです。でも応募はもうしました。もうほんとねぇ去年は悔しかったですね。で、決勝いった人はみんな口々に言うんですよ。「優勝できないぐらいなら、もう決勝出たくない」って。それぐらい自分を追い込むんです。僕も同じ気持ちでした。

 

でも、やっぱり今年も出たいってなったのは、自分の落語を見つめなおせるからです。決勝進出が決まってからの約3週間、決勝でやるネタだけをいつもの何倍も稽古をします。そこで僕の落語は少しマシになったと思います。それまではリズムとメロディーばかりにこだわっていたのが、登場人物同士がちゃんと会話できるようになりました。